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「お前……なんで……」
驚愕しながら、瞳を揺らす姫神は何処か幼い子供みたいだ。
俺は自然と笑みを溢しつつ姫神に答える。
「……なんで、か…。そんなの俺が聞きたいくらいだ。」
そう答えた俺が一番俺の行動を理解できていなかった。
ズキズキと痛む頬を抑え、俺は目を伏せる。
「……ごめん。」
「…は?…」
自然と口をついた俺の謝罪の言葉に、姫神は目を見開いて固まる。
そんな彼に俺は更に言葉を続けた。
「…謝ってどうにかなる事じゃないのはわかってる……だけど、ごめん…。」
「………」
何度も謝る俺に、姫神は無言のまま俺を見つめる。
俺は痛む頬を押さえる手を離し、その手を見つめながら自嘲の笑みを浮かべた。
「俺、正直…中学より前のことはよく覚えてないんだ。それに、姫神の言った演じてるって部分も否定できない。──だけど、全部が嘘な訳じゃない。」
唇を噛み締め、顔を上げる。
すると、こちらを見つめる姫神と視線が交わる。
「───俺は、僅かな間だったけど、君と居て…君と居れて…とても楽しかったんだ。」
そう言った俺の口元は無意識ながらにも、柔らかな弧を描いていた。
「これだけは本当だよ、姫神……」
……姫神に嫌われるのは仕方無い。だけど、信じて欲しかった。
今君と向き合ってる俺は全て本心で語っているのだと……。
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