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食堂に戻った俺達は少しだけ冷めてしまった料理を口に運んでいた。
「やっぱりここの料理は美味しいね。」
「そりゃ、各分野で有名なシェフ達が作ってるんだからうまいだろ。」
姫神のごもっともな台詞に俺は頬を膨らませる。
「いや、美味しすぎて自分の料理の腕がそんなによろしくないような気になってね…」
「なんだそりゃ。テメー殴られて気でも狂ったか?随分としおらしい態度で気色わりぃ」
俺の気持ちを率直に告げたというのに、姫神は気味の悪いものを見る目でこちらを見ていた。
嘘をついて自分を偽るなといったのは何処のどいつだよ…。
素直に感情を表に出しているというのに中々に失礼な態度だ。
「その言いぐさはなんなの?人が素直に心情を吐露してるというのに酷くないかい?」
「…チッ……悪かった。」
俺が不服そうにそう言えば、姫神は舌打ちをしながらも謝罪をしてくれた。
舌打ちをするのは宜しくないが、彼が素直に謝ったという事実だけで充分凄いことだ。
若干軟化した姫神の態度を嬉しく思いつつ話題を件の河崎の話に変えようと口と開く。
「わかってくれたなら良いよ。それより、河崎崇仁の事だけど…「俺のことがなんだって?」」
俺の言葉を遮るように言葉を発した男が、俺たちの座るテーブルの横にニッコリと微笑みながら立っていた。
噂をすればなんとやらだ。
実にタイミングがいい。勿論、皮肉的な意味でだ。
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