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「こんにちは。……えーっと?」
「中山さん、とりあえず傍聴席に。さぁ、光も!」
挨拶もそこそこ、やや強引に傍聴席に連れていかれ、一番前の席に座ったところで、さっきから言いたくてうずうずしていたことを、やっと口にした。
「音無さん。もしかして、なんか都合の悪いことでもあるんですか?
それ変装のつもりですか?」
音無さんのスタイル、明らかにおかしいでしょう。
いつの間に髭生やしてるんだか。
それに加えてメガネとかつら(レゲエ風)
相原先生まで挙動不審で目、泳いでるし……。
一体、何なの?
「う、うん……、まあ……。
あのさ。中山さん、一つ聞いていい?
――あの弁護士さん、誰に紹介されたのかな?」
「あぁ、あのロマンスグレーは、父親の会社の人から紹介された弁護士さんです。
すごく評判が良い、って聞いて。
実際すごく親切丁寧な弁護士さんですよ。
紹介して欲しいんですか? ちょっと待ってください。
確か……、名刺が……」
あったあったと、私は弁護士事務所からもらった名刺を財布から取り出して、眺めた。
え~と。サイレント法律事務所の、っと……
ん? サイレント? 音無……?
「えぇぇ~っ!?」
「しぃー! 声大きい! お願い、大声出さないで!!」
「音無さ~ん、そんなに気まずいなら、どうして来たんですか~?」
「いや俺だって、まさか身内が弁護する、って知らなかったんだよ!
これは、もしかしたら知り合いがいるかも、ってことの変装なの!
まさかだよ~。中山さん~、頼むよ~」
いや、頼まれたって困るし……。
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