ジャスティス

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 同情半分、正義半分で揺れ動いていた私の心情を慮るみたいに、光の手が私の手の上にそっと置かれた。  私が顔を横に向けると、光は少しだけ眉毛を下げて微笑んでいた。  それから力強く頷いて「明子は間違っていない」  そう囁いた。 「うん。ありがとね……」  少し怒った顔をしている光が何だかおかしくて、私も小さく微笑んで頷いた。    そうこうしているうちに、裁判は滞りなく進み、最後の【被告人意見陳述】になった。  リョウは証言台に立ち、前を向いて私や私の家族、それから自分の父親に当てた手紙を読み上げた。  それは、一本調子で建前だけだと思わせるような、温度のない謝罪の言葉だった。  リョウが席に戻ると、いよいよ判決が下される。  裁判長はリョウと傍聴席の私たちを真っ直ぐに見据え、静かに告げた。 「あなたの謝罪の言葉が、あなたの本心であることを願います。懲役1年、執行猶予1年を言い渡します」  そうしてあっけなく裁判は閉幕した。  
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