ファミリータイズ

3/7
前へ
/70ページ
次へ
「あ~!!」 「うっ!」  私が急に叫んだから、相手は驚いて一歩後ろに下がった。 「もしかして……、音無さんの……?」  弟か!? 似てる! 「はい……、初めまして。音無奏多です。兄がお世話になっています」  やっぱり、そうか。  あらやだ、見れば見るほどそっくりよ~。  音無さんが『何も知りません。初心な男の子です』って言ったら(考えると鳥肌だけど)こうなる。っていう感じ。 「初めまして……。  私の方こそ、音無さんにはお世話になっているというか、お世話しているというか……、お世話になりたくないというか……」  もごもごする私の言葉をあっさりスルーして、音無青年は話を続けた。 「実は、兄と連絡がつかなくて。というか……、恥ずかしい話ですが、兄にはいつも逃げられていまして……」  はあ?逃げる? 何、やらかしてんの?あの人は? 「えっーと……、それで私に何の御用で?」  本題に入るつもりか、青年・音無奏多は鼻息荒く一歩前に踏み出た。 「お願いです!兄に帰ってくるように、言ってもらえませんか?  兄は理由も言わず、家を出て行ってしまったんです!」  今度は、私が一歩後退!     「はあ?――あの、あえてご家庭の事情はお尋ねしませんが、お兄様はきっと理由があったと思いますよ。  それに、私が言ったところで、そう易々と言うことを聞くとは……」 「いいえ! あなたの言うことなら、聞いてくれると思うんです!   いつだったか、あなたと兄が一緒にいるところを見かけたことがあるんです。  その時の兄さんの顔……。  俺は、あんなに幸せそうな兄さんの顔を見たことがありませんっ!」  えっ~!? いつよ~、それ!?  間違いなく相原先生だか、光だかの話をしていて、鼻の下伸ばしているのを見られたんだわ~。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加