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「あ~!!」
「うっ!」
私が急に叫んだから、相手は驚いて一歩後ろに下がった。
「もしかして……、音無さんの……?」
弟か!? 似てる!
「はい……、初めまして。音無奏多です。兄がお世話になっています」
やっぱり、そうか。
あらやだ、見れば見るほどそっくりよ~。
音無さんが『何も知りません。初心な男の子です』って言ったら(考えると鳥肌だけど)こうなる。っていう感じ。
「初めまして……。
私の方こそ、音無さんにはお世話になっているというか、お世話しているというか……、お世話になりたくないというか……」
もごもごする私の言葉をあっさりスルーして、音無青年は話を続けた。
「実は、兄と連絡がつかなくて。というか……、恥ずかしい話ですが、兄にはいつも逃げられていまして……」
はあ?逃げる? 何、やらかしてんの?あの人は?
「えっーと……、それで私に何の御用で?」
本題に入るつもりか、青年・音無奏多は鼻息荒く一歩前に踏み出た。
「お願いです!兄に帰ってくるように、言ってもらえませんか?
兄は理由も言わず、家を出て行ってしまったんです!」
今度は、私が一歩後退!
「はあ?――あの、あえてご家庭の事情はお尋ねしませんが、お兄様はきっと理由があったと思いますよ。
それに、私が言ったところで、そう易々と言うことを聞くとは……」
「いいえ! あなたの言うことなら、聞いてくれると思うんです!
いつだったか、あなたと兄が一緒にいるところを見かけたことがあるんです。
その時の兄さんの顔……。
俺は、あんなに幸せそうな兄さんの顔を見たことがありませんっ!」
えっ~!? いつよ~、それ!?
間違いなく相原先生だか、光だかの話をしていて、鼻の下伸ばしているのを見られたんだわ~。
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