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音無父は、そうですか……、と小さく頷いた。
そして「お邪魔してしまい、すみません」と頭を下げて立ち上がった。
奏多青年の方は、まだまだ詰め寄りたそうだったけど、父親につられて立ち上がった。
私は外に出て、二人を見送った。
音無父は別れ際、悲しそうな微笑みを携えて独り言を言うように、音無さんにメッセージを残した。
「いくら親子でも、言ってくれなければ分からないし、説明してくれなければ、理解のしようもありません。
それがたとえ困難なことでも、いくらでも解決する方法はあると、私は信じています」
私はただ黙って頷いた。
親子にしか分かりあえないことがあるように、親子だからこそ、分かりあえないことだってある。
「親子ってさ、本当に面倒くさいよね。
絡まってる時は、もう絶対解けるわけないっ! って思うくらい、ぐっちゃぐちゃなんだけど、一度それが緩みだしたら、うそみたいに解けちゃう。
要するに、愛するがゆえにお互い空回り…、ってやつ?」
振り返って、後ろにいる母親に微笑みかけた。
「あの親子もきっと、解けるときが来るわよ~。明子も協力するんでしょう?」
ご明察。さすが、長いこと母親やっていらっしゃる。
私たちはセダンが見えなくなるまで見送った。
それから、意味深な微笑みを携えてどちらともなく家の中に入った。
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