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「9時か……」
私は時計を見上げて、迷った。
光に電話を掛けようか、どうしようか。
今日、光は泉さんと会っていたはず。
夕方会って、夕飯食べて、盛り上がって?――9時。
微妙な時間だよねぇ……。
でも、今すぐ光に音無親子の相談をしたい。
とりあえず、音無さんから事情を聴くとして。
仮に話してくれたとしても「家に帰れ、もしくはせめて連絡しろ」なんて私が言ったところで聞く訳もなく。
じゃあ、誰の話なら聞くのか?というと、たぶん光だな。
光の言うことなら、承諾はしないまでも、話しくらいは聞くでしょう。
う~ん。この時間なら電話しても、まあ、大丈夫かな。
意を決して携帯を手に取った。
**
何回かのコールで、少し眠そうな光の声が聞こえた。
「光? ごめんね。寝てた?っていうか……、泉さんは?」
『……えっと。なんか疲れてたみたいで。――寝ちゃってる』
はは~ん。こりゃ、うまくいったな。
「え?寝てる? 家にいるんだぁ。ちゃんと自分の気持ち言えたの?」
からかいたいのを我慢して、普通のトーンで質問すると、光の恥ずかしそうな返事が聞こえた。
真っ赤になってる顔が目に浮かぶわ。
「マジで? 良かったね、うまくいったんだ~」
『ん。ふふふ、ありがとう。明子のおかげだよ』
光のこんな優しい声、聞いたことないかもしれないな。
恋が実ると人はこんなにも変わるんだ。
音無さんの時とはまた違う感じ。
しいて言えば、あっちは憧れの大人と居心地の良い空間でリラックス。
で、こっちは、甘い花園でラブラブってか?
あ〜、やだやだ。光のラブラブ光線が電波に乗って脳まで貫きそう。
急いで通話を切ろうと思ったところで、本来の目的を思い出した。
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