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俺の家の隣に最近引っ越して来た人がいる。
人、じゃないのだが。
鶴、である。
はじめ、チャイムをならされたとき、玄関の前に立っていたのは鶴だとわかったときは心底笑った。
人間、驚きすぎると笑いが起きるらしい。
さらには、律儀なことに、この鶴、引っ越し蕎麦なんぞを持って寄越した。
新手の嫌がらせか何かだと思った俺は鶴に声をかけた。
「何ですか嫌がらせですか?」
「いや、ほんとに引っ越してきたんですよ」
なんとこの鶴、人語(それも日本語)を喋るらしい。声からしてメスのようだ。
「隣に引っ越してきた、つるやめいこと言います」
「つるや…めいこ?」
名前まであるらしい
「この見た目の鶴に、魚屋とかの屋、めい、はひらがなで、いは難しい方のゐ、子どもの子で鶴屋めゐ子です」
「なかなかに難しい名前だな」
「よく言われます」
絶対小学生のときに困る名前だ、と思った。そもそも書けないじゃないか。
「まぁ、そんな訳でよろしくお願いします」
「どんな訳だよ」
「斯々然々ってやつですよ」
「斯々然々なぁ……」
「あ、最後に一つだけ。絶対に家を覗かないでくださいね」
「なんだ、機織りでもしてるのか?」
「いえ、不法侵入で訴えますので」
なんとも夢のない回答だった。
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