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家から鶴屋家に歩くこと数十秒。
「隣の家の者ですが」
『はいなんでしょう?』
「あの、鶴屋めゐ子さんの服を一色、お借りできませんか?」
なかなかシュールだろう?男が女の、それも初対面の人の服を貸せだなんて。
はっきりいって犯罪だ。
『あら、もしかして!?――おばーちゃぁん?めゐ子、人に戻ったみたいよー!』
どこか遠くに行ってしまって、インターホンから声が遠ざかっていく。おーい。
玄関から服をもって女性が現れた。めゐ子の母親だろうか。
「あなたがめゐ子を人にしてくれたの?」
「はぁ、まぁ……」
「ありがとう、感謝するわ」
「はい」
「これ、持っていって」
服を渡された。
早速家に帰り、めゐ子に服を渡す。
「ほんと、ありがとうございます。このご恩は一生をかけて返さなければならない、というのがうちのしきたりなんです」
「……は?」
「結婚、してください」
その言葉を放っためゐ子の笑顔は
最高に可愛かった。
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