第1章

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家から鶴屋家に歩くこと数十秒。 「隣の家の者ですが」 『はいなんでしょう?』 「あの、鶴屋めゐ子さんの服を一色、お借りできませんか?」 なかなかシュールだろう?男が女の、それも初対面の人の服を貸せだなんて。 はっきりいって犯罪だ。 『あら、もしかして!?――おばーちゃぁん?めゐ子、人に戻ったみたいよー!』 どこか遠くに行ってしまって、インターホンから声が遠ざかっていく。おーい。 玄関から服をもって女性が現れた。めゐ子の母親だろうか。 「あなたがめゐ子を人にしてくれたの?」 「はぁ、まぁ……」 「ありがとう、感謝するわ」 「はい」 「これ、持っていって」 服を渡された。 早速家に帰り、めゐ子に服を渡す。 「ほんと、ありがとうございます。このご恩は一生をかけて返さなければならない、というのがうちのしきたりなんです」 「……は?」 「結婚、してください」 その言葉を放っためゐ子の笑顔は 最高に可愛かった。
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