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茶色い重厚な扉を開けると、右奥の席で陸が軽く手を振った。
白を基調とした店内の天井には豪華なシャンデリアが煌めき、グリーンやブリザードフラワーが入り口を優雅に飾っている。
美味しい料理をゆっくり食べてもらいたいと、ゆったりとした店内には、四人がけのテーブル席が二つと、二人がけの席が四つしか用意されていない。
フランスやイタリアで十年、修行してきたマスターの作る創作料理はどれも美しく、なかなか予約の取れない店としても有名だ。
アタシだけなら、入る事すらためらうが、陸とマスターが知り合いという事で、一年で一番予約が取れないだろうこの日にまた食事に来る事が出来た。
「こんばんは。来てくれてありがとう。」
いつもと同じ優しい笑顔で陸が微笑む。
出会ってから、ずっと陸は優しい。
口調も穏やかで、怒ってるところを見た事がない。
「こんばんは。今日はありがとうございます。」
軽く会釈をしてお礼を述べた。
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