第2章

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「お兄さんは、体の一部が無いことを、嘆いとう?」 この『とう』は、かなり萌える。 僕は、視界を将棋盤だけにして、関西弁を堪能し始めた。 「兄は良いとも悪いとも言いません。普通に暮らしていまっ、あっ!」 「飛車もらいっ」 油断した。 おっさん、やるな。 「少年よ、メンデルや、モーガンって、知っとう?」 「遺伝の法則ですね。メンデルがエンドウマメ、モーガンがショウジョウバエですよね」 気がつけば、僕の駒は、かなりおっさんの手元に、引越ししていた。 「そうそう。じゃあ、ショウジョウバエ説明してみよう」 「優性遺伝の赤色の目のショウジョウバエと劣性遺伝の白色の目のショウジョウバエがいて、劣性の白色の目の生まれる確率が4分の1」 おっさんが、また、缶ビールをあおった。 僕は、おっさんの喉を盗み見した。 おっさんの喉が、小さく波打った。
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