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「あのさ、白目のショウジョウバエって、自分のこと、赤目じゃないって、嘆いてるんかなあ?」
おっさんの喉の動きに気を取られていた僕は、我に返って、おっさんの顔に、視線を移した。
背の高いおっさんは、僕を見おろしている。
しばし、見つめ合い。
おっさんのボサボサの髪の合間から、シルバーの、小さなピアスが光った。
やばい、おっさんなのに、顔見てても、萌えそうだ。
何故だろう?
「赤目になりたい白目がいたとしても、
白目のほうが数が多い世界に行けば、
赤目になりたいなんて、
思わなくなるかもね。
私の言いたいこと、わかる?」
「すなわち、兄は、住む世界が異なれば、、」
「何も欠けてない」
ナニモカケテイナイ。
そうか、誰もくれなかった答えをくれるからか。
だから、こんな風貌のおっさんだけど、僕の世界では、萌えさせてくれる女に、なりつつあるのかも。
コーラに酔ったかな。
「赤目も白目も、私たちから見れば、ハエでしかないしね」
おっさんは、空になったビールの缶の腹を、ペコンと凹ました。
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