第1章

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『ドンドン』 ドアを乱暴に叩く音で、我に帰った。 本は、やはり魔物だ。 本を棚に入れるだけなのに、うっかり手に取って読み始めていた。 概ね本を片付けてからの読書で助かった。 「いはる?」 さっき挨拶をした、隣の部屋の女だ。 『いはる?』か。 何だかいい響き。 ドア越しだからか、悪友の言う通り、少し萌えそうだ。 ドアを開けると、ボサボサの髪をした隣の女が、神戸の港をあしらった小さな菓子缶を持って立っていた。 ふーん、神戸の子か? 「こんばんは。今日隣に越して来ました。よろしく」 「こちらこそ、よろしくお願いします」 僕は、菓子缶を受け取りながら、隣の部屋の女を見上げた。 見上げるほど、女の背は高い。 僕も、どちらかというと背は高い方だけど、女は僕より遥かに高い。
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