第1章

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神経質な主人公。 金がなくボロいアパートの角部屋で一人暮らしをしている。 現在隣には誰も住んでいない。 そのため騒音などに悩むこともなく、 快適な生活を送っていた。 しかしある日、何やらガタゴトと騒がしい音が聞こえてくる。 どうやら隣に誰か引っ越してきたらしい。 「ああ、ついに人が越してきたか……」 とやるせない気持ちになる。 次第に生活音がするようになった。 足音、ドアの開け閉めの音、洗濯機の稼働音、テレビの音、 フライパンで何かを炒める音、トイレを流す音。 こんな普通の音でも毎日毎日イライラが募っていく主人公。 今日は何やら音楽が聞こえてきた。 「もういい加減にしてくれ!」 ここでふと気付く。 「……どこかで聞いたことのある曲だな」 それはかなりマイナーなPCゲームの主題歌であったが、 主人公がお気に入りの曲だった。 徐々に怒りの感情が引いていく。 これまで耳触りでしょうがなかった様々な音も、 不思議とあまり気にならなくなってきた。 ある時など、なじみのある電子音を耳にして、 隣人が自分もはまっているゲームと 同じゲームをやっているらしいことに気付いた。 親友ができたような気持ちになり、 打って変わって楽しい気持ちで日々を過ごす。 主人公は思い切って隣人を訪ねてみることにする。 「少し遅いけど、挨拶くらいはしておかないとな」 外に出て、チャイムを押す。 しばらく待っても反応がない。 またチャイムを押す。 ……また反応がない。 「出かけているのかな」 「それ、壊れてるんだよ」 いつの間にか傍にいた大家のおじさんが教えてくれた。 「え? そうなんですか?」 確かに音は鳴っていなかったようだ。 「そうだよ。それより何の用があるんだ? この空き部屋に」
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