第1章

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実際に機関銃を操作した豊川保安官は、吉永のどんな慰めにも心を癒すことができず、 その後、1か月もの間メンタルケアのために入院した程であった      横須賀保安部 海上保安庁第3管区の担当水域は東は茨城県、福島県の県境から南東より少し北側に傾 けて引いた線と、静岡県、愛知県の県境から北緯23度30分東経140度30分まで 線を引き、そこから西側に宮崎沖まで線を引き又、そこから南に線を引いた間の海域を 受け持ち、背後には首都圏を背負っているという、広大な担当水域と重要な都市を持つ 環境の中にある。 本部を横浜に置き、茨城、千葉、銚子、東京、横浜、横須賀、清水、下田の八つの保安 部を擁しており、その他に東京湾海上保安センター、羽田航空基地、そして羽田特殊救 難基地、横浜機動防除基地がある。 また各保安部はそれぞれ、日立分室、鹿島保安署、館山分室、船橋分室、木更津保安署、 勝浦保安署、小笠原保安署、川崎保安署、湘南マリンパトロールステーション(現在保 安署)、伊東マリンステーション、田子の浦分室、御前崎保安署がある。 1994年3月、雄二は横須賀保安部に転属となった。 雄二が24才となった春である。 そして同時に私生活にも変化が出てきた。 今まで通っていた横浜の自宅からは通勤の便が悪いと言って、横須賀市の佐島マリーナ 近くに2DKの部屋を借りそこから通勤するようになった。 そして、一昨年親友の阿部と野毛の中華料理屋で飲んだ時阿部が連れてきた加藤智美の 紹介で知り合った山本久美と付き合うようになっていた。 久美は静岡県浜松市に生まれ地元の高校を卒業後1年間専門学校に行き、現在大手ゼネ コンでキャドオペレーターをしており、智美とは専門学校で知り合ったという20歳の 女性で瞳の大きな愛くるしい顔立ちをしていた。 身長1m80?aで体重75?s、肩幅が広く胸板の厚い筋肉質の雄二と並んで歩いていると 雄二の肩ほど背丈の久美はとても小さく見えた。 雄二は海上保安学校に入る前の2年間は普通の大学生であった。 しかしキャンパスで生活している内、将来に疑問を持ち始め、惰性で大学へ通うようにな っていた。 魅力のないありきたりの授業を受け、彼女とデートをしても、友人達と夜の町に繰り出 しても、何故か満たされされなかった。
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