隣人は猫で、僕の彼女。Full Ver.

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猫は餌を目の前に用意しても、自分から食べようとしなかった。 たぶん、そんな気力もないのだろう。 ろくなご飯を食べてなかったのだろうか? 飼い主は餌を与えていなかったのか? あの大雪の中でも、自宅に篭らずに外に出ていたのは、餌を探していたから? 今まで、お腹が空いているような素振りは一度も見せなかったのに……。 毎日、猫と顔を合わせていたのに、どうして気付かなかったのかと悔やんでも悔やみきれない。 病院から処方された柔らかい缶詰をひと肌程度に温め、猫の口の奥に少しだけ入れてやると、やっと呑み込んでくれて、僕はやっと昼間から続いていた不安感から解放される。 少しずつ、食べさせていけば、必ず良くなるはずだ。 僕は会社を休んでも、この猫をしっかり看病をすると決めた。
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