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黒×グレーのしま模様。
手袋をはめ、首元からエプロンをしているみたいに白い、手足とお腹。
小柄で、エメラルドグリーンのぱっちりした瞳が印象的な猫だった。
おそらく血統書ではなく、雑種だろうけど、背をすっと張り、こちらを見ているその姿は気高さを感じる。
僕はネコ派かイヌ派かと聞かれれば、断然ネコ派だ。
だから、僕を見て「にゃあ」と挨拶してくれたこの猫に心を奪われてしまい、顔がほころんでしまう。
「君は隣に引っ越してきたの?」
声を掛けると、「にゃ!」と返事をして、僕をじっと見た。
隣人は猫を飼っているのか。
僕は心なしか、猫を飼っている隣人が羨ましくなる。
そういえば、この猫を勝手にメスだと決めつけて話しかけたけど、もしかしたらオスかもしれなかったな。
次はなんて話を続けようか考えているうちに、猫は隣部屋のベランダに戻ってしまった。
トントンと猫が何か段差を上る音がして、ベランダが静まる。
おそらく小窓から部屋の中に戻ったのだろう。
僕も部屋の中に戻ることにした。
部屋の中と外の温度の違いに、身体がぶるっと震えた。
冷えた空気は、冬がどんどん本格的になっていることを伝えていた。
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