隣人は猫で、僕の彼女。Full Ver.

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どうするか決断を迷いながら、隣部屋のベランダに目を向ける。 そして、反対側のベランダにも視線を移して、僕はハッとした。 反対隣ベランダは部屋からの照明が漏れて明るい。 でも、猫の飼い主の部屋は照明が漏れてもいないのだ。 それに、人が住んでいる部屋からは何かしらの物音や声が聞こえるもので、人の気配がある。 でもここ一週間を振り返れば、そのベランダが明るかったことは一度もないし、猫以外の物音や声が聞こえてきたことはなかったのだ。 どういうことだろう? 夜は仕事で、昼間に休みを取る昼夜逆転の生活でもしているのか? 訳が分からず、猫を抱いていた手が自然と緩むと、猫はひょんと僕の腕をすり抜けてしまった。 そして、「にゃあ」と鳴き、隣部屋に帰ってしまう。 腕の中から、ほんわかした温もりが消えてしまい、僕はなんだか寂しくなった。
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