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「うるせえよ。そう言うなら、その不動の九人をなんとかしろよ」
「いやそこはほら、お前がご自慢の頭脳で倒せよ。打倒生徒会ダロ?まあ、万年最下層走ってる俺が偉そうなこと言えねーけどネ」
しわくちゃの紙を机に放り出し、神谷は頭の後ろで腕を組む。机に置かれた紙には『緒方結斗』と『第十位』、そして『IQ165』の文字がやけにくっきりとした黒字で書かれている。それを少しばかり睨みつけるようにして一瞥した緒方は、短い溜息の後ようやくシャーペンを置いた。
「お前は誰が上位九人だと思う」
「宇都宮姉弟は怪しいナ。怪しいどころじゃない。アイツらは確実に『何か』の役割を担ってると思う」
「あの二人は当然『何か』だろ」
「その『何か』までは分かんないけど。後は……ううん、誰だろうナ。白柳カナ」
「白柳?三年の白柳類のことか」
「あれ。噂に疎いことで有名な緒方も、流石に白柳サンのことは知ってんの?」
「委員会が一緒なんだよ。あの人、なんか噂になってんのか」
神谷は自分の痛んだ銀髪を指先で弄りながら、にんまりと口元を歪めた。待ってました、と言わんばかりのその表情に、緒方は眉を顰める。
「緒方の入ってる委員会って言えば、生徒会執行委員か?はあ、なら尚更怪しいナ。白柳類は生徒会長だって、最近じゃ一番注目されてる奴の一人だゼ」
「生徒会長?何を根拠に」
「ここ一年の定期試験や全学年統一試験でずっと一位。全国模試でも上位五十人には必ず入ってる。更にどういうわけか、性格や素行も良いと来た。女子生徒が根こそぎ持って行かれそうなレベルだゼ。全く、疎ましい奴ダナ」
「お前がモテないのはその見た目と素行だろうぜ。まずきっちり制服を着ろ。不用意に他人を疎むな。……頭の良さだけで判断されんなら、楽だろうよ。でも違うだろ。この学校のシステムは、学力だけじゃ判断出来ないようになってる」
そう言って緒方は、少しシワの伸ばされたその紙を再びぐしゃりと丸め込み勢い良くゴミ箱へと投げた。壁に跳ね返り見事ゴミ箱に吸い込まれた紙に、ピュウ、と神谷が口笛を吹いた。
「後もう一人」
「誰」
「生徒会ってわけじゃーないが、面白い話を聞いたゼ。天羽雅希。知ってるか?」
「知ってるも何も、そいつも生徒会執行委員だ。でも、それ以外には知らねー」
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