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私はよっぽど欲しそうな顔をしていたに違いない。思い返すと恥ずかしくなる。
でもそれが単なる儀礼的なものであっても、黒木の気遣いがとても嬉しかった。
図らずも叶ったささやかな憧れ。
アイボリーのサテンリボンで結ばれた美しい小箱を眺めていると自然に口元がほころんできて、寧史に煽られた不安が鎮まっていく。
「どっちが私のかな……?」
もう一度指輪を見てみたくなり、リボンをほどいて小箱をそっと開けてみた。
「綺麗……」
思わずため息が漏れる。
結婚指輪はどれも似たようなデザインだと思っていたけれど、これは本当に美しかった。
ビロードからそっと外して、ひんやりとした光をライトにかざす。
絶妙な角度でエッジをきかせたシンプルな細いリングは繊細さと量感を併せ持っていて、黒木と私はすぐにこれで意見が一致した。
しばらく見とれた後、内側の刻印を覗き込んだ私は、そこである偶然に気づいて停止した。
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