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そこには結婚の日付とともに、二人の名前が刻まれている。
“Y to R”
裕一から里英へ。
互いのイニシャルを用いた、ごく一般的な刻印だ。
そこにある皮肉な偶然に気づいてしまった自分を呪う。
“Y to R”
寧史から里英へ。
それを願い続けた三年間の、私に刻まれた消せない思い出。
指輪を持つ手にポタリと落ちた滴を慌てて拭う。
黒木が贈ってくれた指輪に別の人を重ねてしまった自分が許せなかった。
なのに自分を責めても、涙は溢れて止まらない。
無惨な結末を迎えたけれど、寧史の強さに惹かれ、寧史の弱さを愛してきた。
だけど全てを捨てなければならないのだと、ようやく思い知った。
昼間寧史に見せなかった分、涙が終わりの時を待っていたかのように後から後から溢れて頬を濡らした。
泣くのもこれが本当の最後。
指輪を握りしめ、声を立てずに泣いた。
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