指輪の刻印

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「だから今のうちに練習しておいた方がいいかもしれませんね」 「はい…。ペーパードライバー講習とかですよね…」 時間もお金もかかりそうだ。 心の中でため息をつく。 ところが彼は思いがけないことを言った。 「わざわざ教習所に行かなくても、この車で練習すればいいですよ」 「えっ?」 思わず背筋をピンと伸ばして彼に向き直った。 今日、迎えに来てもらってから初めてまともに彼の顔を見たかもしれない。 「それは無理です!絶対に」 「どうして?」 「私、ぶつけますから!」 必死で顔をぶるぶる振る私の慌てっぷりが可笑しいのか、黒木は前方を見たまま笑った。 「この車は頑丈だから比較的安全だと思いますよ」 「いや、心配なのは私じゃなくて対人とか物損とか」 「それなら山の中で練習しますか?木や岩が相手ならぶつけてくれても構わないですから」
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