素肌を彼に預ければ

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「いかがですか?」 私の反応を待つ鏡越しのアドバイザーの満面の笑みにぎこちなく笑い返す。 ここは式場となるホテルのドレスショップだ。 黒木はさっさとタキシードを選び終えたようで、きっと試着室の外で退屈しているだろう。 指輪などの買い物を終えると、今度はドレス。 次から次へと、決めなければならないことはたくさんある。 「お客様は細身でいらっしゃいますから、このデザインは本当にお似合いですね」 「……」 お世辞文句に「そうですね」とも言えず、どう返せば適当なのかぐるぐる考えながら鏡の中の自分を眺める。 首から上がまったく普段通りなので、何だかヘンテコな気もする。 「お客様は背中がとてもお綺麗ですからとても映えますね。ほら、ご覧になってみて下さい」 促されるまま、狭いフィッティングルームの中で慣れないドレスの裾にもたつきながらごそごそ回った。
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