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「では黒木様にもご覧頂きましょうね」
アドバイザーの声で我に返る。
当たり前のことなんだろうけれど、黒木に見てもらうなんて恥ずかしすぎて、私にはまだ無理だ。
「あ、あのっ…!」
まだ心の準備が!
けれど、止める間もなく扉は開けられた。
「お待たせ致しました、黒木様」
ソファに腰かけていた黒木が立ち上がるのを視界の隅に意識しながら、恥ずかしくて俯いたまま進み出る。
「綺麗ですね」
優しい声で恐る恐る顔を上げると、黒木はにっこり笑っていた。
そりゃ誰でもそう言うしかないだろうと分かってはいるけれど、何だかくすぐったくて眩しくて、見上げたまま目をパチパチしてしまった。
「こういうスレンダーなのは珍しいんですか?よく似合ってる」
でも上から下までしげしげと眺められるとやっぱり落ち着かない。
黒木は私のドレスなんかに興味あるのだろうか?
だって私たち、まだ愛も何もないんだもの……。
こんなことに付き合わせるのが何だか申し訳ない気がした。
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