素肌を彼に預ければ

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待合室はドレス姿のカップルだらけだった。 人目も憚らずいちゃいちゃと抱きついている人、恋人のドレス姿に嬉しそうに頬を緩める人。 あの人たちはみんな恋をして、プロポーズして、ここにいるのに。 もし相手が私でなく黒木の想い人だったら、黒木はもっと幸せにこの作業を楽しめるんだろうな……と、カップル達を見ながらそんなことを考えた。 彼はどんな恋をしてきたのだろう? 人気はあるのに一度も噂を聞いたことがないし、あまり感情の起伏がないので想像がつかない。 「こういうスレンダーなドレスは着る方を選ぶので難しいんです」 傍らの黒木はどう感じているのか、アドバイザーの説明に真面目な顔で頷いている。 「でも新婦様は細身でいらっしゃるので本当によくお似合いで。ここまで似合う方はめったにいらっしゃいません」 大袈裟に誉められて身を縮める。 盛り上がっているカップルならいいだろうけれど、どうにも微妙だ。
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