素肌を彼に預ければ

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「お背中もとてもお綺麗でいらっしゃるから」 マネキンのように勝手にくるりとひっくり返され、背中の鑑賞が始まった。 ドレス選びがここまで見られる作業だったなんて。 恥ずかしさと緊張のあまり汗が滲んでくる。 黒木の前でこんなに肌を露出するのは初めてだ。 肩も背中も胸元も、今はまだ寒い時期だから腕すら出したこともない。 お見合いで初めて顔を合わせてから、何回ぐらい会っただろう? かなりの回数になるはずだ。 けれど、私たちにはまだ何も起こっていなかった。 手を繋いだことも、 当然キスも、 言うまでもないけれどその先も。 言葉遣いだっていつも敬語で、名前で呼ばれたこともない。 本当に私たちは「他人」状態なのだ。
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