素肌を彼に預ければ

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もちろん私も濃厚な展開を望んでいた訳ではない。 この婚約に及んだ事情が事情だったから、今まではそんな雰囲気にならないことにむしろ助けられていた。 寧史を見返したくて黒木と婚約した一方で、どこかにまだ寧史への未練や黒木に対する習慣的な敵意が残っていて、黒木に身も心も差し出すことがまるで魂を売るようにも思えていた。 きっかけは何だったのだろう? あの結婚指輪だったのか、倉庫での出来事だったのか、それともそれ以前からの積み重ねか。 いつも黒木が見せてくれる細やかな気遣いのせいで最近では彼に感じていた疑念も薄れてきて、代わりにこのままではいけないという思いが強くなり始めていた。
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