素肌を彼に預ければ

9/23
前へ
/23ページ
次へ
ところが、着れば着るほど迷うというのがドレス選びで一番よく陥るパターンらしい。 デザインはこっち。素材はあっち。パール刺繍はそっち。 「ゆっくり考えたらいいですよ」 「すみません…」 黒木は隣でゆったりとサービスのコーヒーを飲んでいるけれど、一体あれは何杯目だろう? でも焦れば焦るほど頭の中がウニ状態になってくる。 すると私の優柔不断ぶりを見かねたのか、意外にも黒木が要望を口にした。 「僕は最初のが好きだな。一番似合ってたし」 「そうですか?じゃあこれにしようかな……。素敵だったし」 寧史への意地が匂う選択はしたくないけれど、黒木が綺麗だと思ってくれるなら。 でも一つだけ心残りがあった。 「こんなデザインで素材違いはありませんか?レース生地も捨てがたくて」 スレンダータイプはシンプルなサテン地。でも私は繊細で柔らかなレースに憧れていた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3645人が本棚に入れています
本棚に追加