二人の温度

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なかなか復活しない私を見かねてか、帰り道もしきりに思い出して笑っていた黒木が別の話題を持ち出した。 「席次表の材料はそれでいい?印刷は僕の部屋のプリンターを使うといいよ」 「はい、ありがとうございます。材料もこれで大丈夫です」 席次表はホテルに任せず、私が作ることになった。 何でも作りたくなってしまう私は、作画ソフトで簡単に作れてしまえそうな席次表に結構な金額が加算されているのを見て我慢できず、つい自分で作りたいと申し出てしまったのだけれど、黒木は嫌な顔一つ見せず快諾してくれた。 寧史なら貧乏臭いとか何とか、お金をかけたがるだろう。 「そういう作業もあるし、早めに引っ越して来たら?今の部屋の家賃ももったいないし」 「はい…そうします」 思わぬ誘いに嬉しさと照れ臭さで落ち込みも吹っ飛んだ私は、サイドミラーにニヤニヤ笑いが映っているのを見て慌てて顔を引き締めた。 「それはそうと、心残りなんじゃないの?」 「何がですか?」 「ほら、ペットショップの。僕のせいでごめんね」 「ああ……いいんです」 午前中の出来事を思い出して、笑って首を振った。
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