二人の温度

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ホームセンターでレジに向かっている時、賑やかな犬の鳴き声につい誘われて、私はペットコーナーの前で足を止めた。 猫でなくても犬でもウサギでもハムスターでも、私はペットが欲しくて仕方がない。 猫のケージを覗きこむ私に店員さんが抱かせてくれたのは、フワフワのチンチラの子猫だった。 あまりの可愛さに私はメロメロで、黒木にも抱いてみてと渡そうとして、そこでショッキングな事実が判明した。 黒木は猫が苦手だったらしい。 仕方なく私たちはそそくさとペットコーナーを後にしたのだった。 「アレルギーとかですか?」 「いや。理由はないんだけど…」 運転しながら彼は珍しく決まり悪そうに口ごもった。 「どうも猫には好かれる感じがしなくて、どう抱いていいのか分からないんだよね……」 猫を飼えないのは残念だけど、猫を渡されたままカチンコチンに固まってしまった彼の姿を思い出して、込み上げた笑いを俯いて噛み殺した。
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