二人の温度

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そんなにぎすぎすした部門なら、常に成績トップの黒木にもそれなりの確執があるのだろうか。 彼はいつも涼しげであまり愚痴を言うタイプではないから、本当のところがよく分からない。 「ちょっと里英、聞いてる?」 お箸を宙に止めたまま黒木のことを考えていると、ようやく西野専務の悪口にも飽きたらしい美和が私のトレーを突っついてきた。 「専務へのお届け物だけど、どうする?行くなら早く食べてボックスから引き揚げてこないと」 「どうしよう…」 お見合いの疑惑もあるから西野専務とは喋りたくないし、しかもエネ本には寧史がいる。 仕事内容からして黒木と席が近いかもしれない。 「見とかないと一生後悔するよ?アタシ的には肩で受話器挟んでたのが一番萌えたな。眼鏡が似合うのはエネ本でダントツだよ」 「えっ、美和って彼が眼鏡かけてるところ見たの?」 諦めかけていたのに思わず食いついてしまった。
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