二人の温度

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エレベーターを待ちながら、頬がテカってないか手で押さえてみたり、スカートの皺を伸ばしてみたり、そわそわと落ち着かない。 昼食後、化粧直しも後回しにして美和と経理部に戻ったら、ボックスはもう総務に届けられた後で空っぽだった。 私はすぐに諦めたのに、パワフルな美和がその足で総務に走り、配られる寸前の封書を取り返して来てくれたおかげで、こうして私は黒木のフロアへ向かうエレベーターを待っているのだ。 “がんばって!” 美和の盛大な口パクに見送られて赤面した頬がなかなか冷めず、手で顔をあおぎながらエレベーターの表示を見上げる。 黒木や寧史がいるエネルギー本部は二階の経理本部よりはるか上の十八階にある。 経理本部が低層階にあるのは銀行関係など外部の出入りが頻繁なためと聞いているけれど、私にはその華やかさを象徴するような眺めのいいオフィスが憧れだった。
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