二人の温度

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経理部だってなくてはならない重要な部門だ。 でも、会社の主役であり世界を舞台にする事業部門にはどこか羨望と劣等感が拭えない。 一度ぐらいあの躍動的な雰囲気の中で仕事してみたかったな、と。 社員食堂で見かけるのと違い、途中の階で乗り込んでくる社員はみんなぴりぴりとした緊張感に満ちているように見えて、少し気後れする。 自分を奮い立たせているうちに、エレベーターはあっという間に十八階に着いた。 「北エレベーター正面の入口、だよね……」 エレベーターが開いていきなり入口に到着するのは心臓に悪い気がして、わざわざ中央エレベーターから上がった私は初めての十八階の雰囲気に慣れようと深呼吸しながら廊下を進んだ。 入社して六年も経つのに、新入社員みたいにオドオドしている自分が可笑しくなる。
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