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「こちらも紹介するよ。監査役室の西野円香さん。専務のお嬢さんだから黒木は知ってるよな?」
やけに饒舌な寧史は今、私がどう感じるかなんて頭にないに違いない。
彼に押されるようにして進み出た彼女は、以前に見た時よりお腹がふっくらと目立っていた。
「初めまして。ご婚約おめでとうございます」
黒木は私の腰を少し撫でるような仕草をしながら愛想良く彼女に挨拶した。
「専務にはいつも大変お世話になっていますよ」
でも彼女はひどく顔色が悪く、強ばった顔で無言のままわずかに会釈しただけだった。
妊婦さんなのに、倒れるのではないかと心配になる。
と思った時、西野円香が私に鋭い視線を向けた。
私のドレスを上から下までなぞった後、私の顔を睨みつけてきた彼女の目は底知れぬ敵意に満ちていて、ぞっと寒気がした。
本来なら私が恨みを持つ側のはずなのに、寧史はあまり彼女を大切にしていないのだろうか?
彼は自分のプライドを守るのに必死で、彼女の顔色の悪さにも気づいてやっていないようだった。
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