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「私が担当させて頂いているこちらのお二人はですね、最高の格式のホテルの、一番人気のバンケットルームで挙式されるんですよ。ですから私も腕によりをかけて最高のドレスをご用意させて頂きました」
どうやら彼女は自分の言葉がかなりの人間を侮辱していることに気づけないほど、上客を掴んだことに興奮しているらしい。
それにしても、西野円香のドレスは何というのか、私には正直あまり綺麗とは思えなかった。
マタニティーでゆったりめのデザインの上、あらゆる飾りをゴテゴテにくっつけたせいで、余計に丸く小柄に見える。
「大きな会場にふさわしい華やかさが必要ですからね。何しろ芸能人も数多く式を挙げているところですから!」
そういうものかと仕方なく相槌を打っていると、後ろでかすかに気配がした。
振り向くと、私たちの担当者が試着室の片付けを終えて出てきていて、申し訳なさそうに小さくなっている。
たぶん寧史たちの担当者の方が格上で、止めたくても止められないのだろう。
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