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黒木がドアを開けて振り向き、私を促すように腰に手を添えた。
二人の体が密着すると、アドバイザーに聞こえないよう黒木がそっと耳打ちしてきた。
「さっきのネグリジェ風も結構いけてたよ」
「もう……」
下を向いて笑いをこらえながら外に出ようとした時、私を誘導する黒木がほんのわずかにビクッと揺れて止まった。
それはごく一瞬の動きだったけれど、何かただならぬ予感がして顔を上げた私は、思わずハッと息を飲んで立ちすくんだ。
そこに居たのは、数ヵ月前、私を奈落の底に突き落とした二人。
あちらも同時に気づいたらしく、青ざめた顔で目を見開き、立ちすくんでいる。
どうして彼らがここに?
どうしてこんなひどい偶然が?
頭の中が嵐のように渦を巻いて目眩がした。
「桐谷」
凍りつくような数秒間の後、黒木がにこやかに声をかけながら私の腰を抱いたまま進み出た。
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