彼の秘密

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「なぜ黒木が見合いするのか、不思議に思わなかったか?」 「それは……」 海外赴任するから、と。 でも黒木のアメリカ赴任内定を寧史に言っていいものか分からないから口ごもった。 「専務は黒木と取引してたんだ」 取引……。 覚悟はしていたけれど、心に墨を落としたような波紋が広がっていく。 「どういうこと……?」 「専務は黒木に、一度会うだけで断ってくれたらいいと言ったらしい」 リストラなのは分かっていても、こんなに屈辱的な扱いで黒木に提案されていたなんて。 知らなかったことすらも恥ずかしくて消えてしまいたくなった。 “瓢箪から駒” 宮内部長の小馬鹿にした言葉は、そういうことだったのだ。 「里英に恥をかかせて、会社に居づらくするのが目的だったんだろう」 まだ黒木の目的ではなく専務の目的しか聞いていないのに、今の話だけで十分辛い。 どうして私が、ここまで踏みにじられなければならないのだろう?
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