彼の秘密

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「申し訳ない。リストラされる理由なんかない里英をそんな目に遭わせたのは俺が原因だ。里英は一生懸命勉強してたのに、全部無駄にした。本当にごめん」 頭を下げる寧史を言葉もなく眺める。 皮肉なことに、リストラに遭わないよう私に努力することを教えてくれたのは寧史だった。 しばらくして顔を上げた寧史は申し訳なさそうに付け足した。 「円香は里英のことを曲解して、尾ひれをつけて専務に言ったんだと思う」 「寧史に付きまとってると?」 「事実と違うよな。ごめん。俺も詳しいことは二日前まで知らなかったんだ」 二日前って、あの遭遇の日だ。 あの日、あのあと何かがあったのだろうか。 「だから専務は俺から気を逸らそうと、女が飛び付くような男をエサにしたんだ」 専務の思うままに操られた屈辱で頭がぐらぐらしたけれど、問題はそこではない。 「黒木主任が取引で得たものは?」
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