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「アメリカ赴任だよ」
寧史は内心の苦々しさを表情に滲ませていたけれど、私はそれを聞いてホッとした。
そのぐらいなら私は平気だし、そこから始まったのでも構わない。
「今度のはすごく大きな案件って里英も知ってるよな?経済産業省も関わってるし、新聞の一面トップだっただろ」
事実上、出世の道筋が決定づけられるのだと寧史も狙っていたポジションだ。
「専務は黒木に内定をちらつかせたんだと思う」
「思う、って。それは寧史の憶測でしょう?」
黒木は実力で出世できる人だ。
そんな汚い取引に本気で食いつくはずがない。
「憶測じゃない。専務がそう言ってるのを聞いた」
「誰に?専務が黒木主任に言ったのを寧史が聞いたの?」
「いや、違う」
「誰によ?はっきり言ってよ」
中途半端に言い渋る寧史にだんだん苛々してきた。
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