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「でも、もしそんな取引が本当にあったとしても構わないから」
専務への恨みもいっしょくたに、寧史の顔を睨み付ける。
「結局、黒木主任は縁談を断らなかった。きちんと受けてくれたもの」
「でも、まだ赴任の正式な辞令は下りてないだろ?」
「だから何?」
「黒木は頭が切れる奴だ。専務の腹黒さを知り尽くしてるから、里英の退職と自分の赴任が確定するまでの駆け引きじゃないのか?」
「何が言いたいの?今から断るつもりだって言うの?バカ言わないでよ!」
一気に激昂してしまって声が高くなった。
「寧史だって見たでしょう?ドレスも式場も、みんな決まってるのよ?招待状も、先週末に出したんだから!」
「来てないよ」
「え?」
「招待状は届いてない」
「そんなの……ポスト見てないだけでしょ?それか、郵便が遅れてるだけだよ」
黒木が投函するのを見た訳ではない。ただ「出した」と聞いただけの私の声はだんだんと小さくなった。
「寧史を呼ばないだけかもしれないじゃない……」
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