2825人が本棚に入れています
本棚に追加
「仕事の取引でもそうだ。あいつは誠実そうな顔でぎりぎりまで気を持たせて、一番有利な相手を見極めると残酷なタイミングで他を切り捨てる」
「一番残酷なタイミングで切り捨てたのは寧史じゃない!一緒にしないで!」
もう金切り声だった。
「里英はあいつのことを何も知らないだろ」
「知ってる!」
知らないかもしれないけど、知ってる。
もう理屈じゃない。
悲痛な願いだった。
「今になって何よ」
「前にも止めただろ。それに俺だって二日前に知ったんだ、里英の婚約も黒木の取引も」
「寧史の言うことなんて信じられない」
涙を見せたら負けだ。
「何を言われても、私は絶対に彼を信じてる」
強がりを吐き捨てて、くるりと背中を向けた私に、彼の言葉が刺さった。
「まだある。これでも黒木を信じるか?」
最初のコメントを投稿しよう!