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「……体調は大丈夫ですか?」
沈黙に耐えかね、先に口を開いたのは私だ。
彼女は不意を突かれたように少し視線を揺らした後、小さく頷いた。
「ええ。あの時はご心配おかけしました」
ホットミルクと紅茶が運ばれてきて、店員が並べ終わるのを待ちながらまた二人とも沈黙する。
ホットミルクをかき混ぜる彼女の手が少しぎこちない様子からして、彼女も緊張しているらしい。
彼女のお腹はまだマタニティを着るほどではないらしく、ゆったりとしたワンピースの胸元には一目で分かる有名ブランドのロゴマークのボタンがついている。
でも、カフェまでのわずかな距離を歩く間に無意識に彼女を観察していて気づいたけれど、足元はあまりお洒落とは言えない、安定感を重視したような靴だった。
派手な彼女もしっかり母親の意識があるのだと思うと、軽蔑の念が少し薄れるのと同時に、私がまだ知らない神秘への畏怖と羨望のような、複雑な気分になった。
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