奪う女と奪われた女

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ところが、私が神妙な気分で静かに紅茶に口をつけていると、彼女が突然単刀直入に切り込んできた。 「寧史とまだ会ってますか?」 謝罪の言葉を聞きたいなどと今さら思ってはいない。 けれど、いきなり“寧史”呼ばわりで所有権を主張してくるなんて、あまりの遠慮の無さに腹の中がカッと燃えた。 「いいえ」 少し零れた紅茶のカップを置き、彼女を見つめ返した。 「彼と関わるつもりは一切ありません」 倉庫で会ったから否定しづらいけれど、彼女にとやかく言われる筋合いはない。 「寧史とはいつから?」 いやそれはこっちの質問だろう、と言いたくなる。 「忘れました」 忘れさせられた、と言うべきか。 寧史のことで争う気は微塵もないけれど、ゴミみたいに扱われるのは専務だけでたくさんだ。
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