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ところが、私の素っ気ない態度が気に障ったのか、今までのは単なる導入部分だったのか、彼女は私が一番恐れている話題に踏み込んできた。
「じゃあ、寧史と喋ってないなら、きっと何もご存じないでしょうね」
彼女の小さな口元が少し歪みながら微笑んだ。
「ショックを受けられるかもしれませんけど、知っておいた方がいいかと思って」
そこでわざわざホットミルクを一口飲んで一呼吸置いてから、彼女は私の表情の変化を見逃すまいとするようにまっすぐこちらを見た。
「私、黒木裕一と付き合っていたんです。寧史と婚約するまで」
刺すような彼女の目を静かに見つめ返す。
衝撃は小さかった。
本来ならここで私は無様に撃沈しただろう。事前に寧史から聞けたことを心の中で感謝した。
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