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でも彼女は何も答えず、ホットミルクをかき混ぜる手を止め、じっとうつむいた。
しばらくして彼女はまた勝ち気な表情を取り戻し、ぐいっと顔を上げた。
「私が専務の娘だからよ。彼は権力に支配されるのを嫌っただけで、ちゃんと私を愛してた」
やっぱり聞くんじゃなかったと後悔した。
二人の間に愛があったなんて、苦渋の決断で別れたなんて、聞きたくなかった。
次第に顔色を失っていくのを自覚しながら耐えている私に、西野円香が追い討ちをかけてきた。
「彼がいずれ破談にするかもしれないってことは覚悟しておいた方がいいわよ。きっと赴任の辞令を待っているから」
「彼はそんな人ではありません」
ぎりぎりのプライドで必死に言い返したけれど、私の声には力がなかった。
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