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「彼があなたに優しいからって勘違いしないで。彼がなぜトップなのか分かる?完璧に先読みして、完璧に振る舞える男だからよ」
これ以上ないほど私を傷つけながら、彼女も泣きそうな顔をしていた。
「聞いたでしょ?私に向かって平然と“初めまして”なんて言ったのを」
「彼が冷たいのだとしたら、それは西野さんがこんな形で裏切ったからじゃないですか」
いったい、この言い合いが何になるのだろう?
相手は妊婦なのに。
でも、後悔しても遅かった。
妊娠で不安定なせいなのか、彼女の声が一段と高くなった。
「彼があなたを庇ったとしても、彼には結婚する気なんてない。そんなはずないから」
彼女の顔にさっと朱がさして、感情的になったのをごまかすようにグラスを掴んで水を飲み干した。
「仮にあなたが結婚まで辿り着けたとしても、彼にとってそれは私への当て付けよ。何も持たないあなたを選んでみせたのよ」
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