奪う女と奪われた女

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変なアドレナリンでも出ているのか、すぐに電車に乗る気がせず、普段は行かない駅の反対側に抜けて、やみくもに歩く。 ようやく電車に乗り家に帰りつく頃にはクタクタになっていて、靴を脱ぐなり玄関にへたりこんだ。 のろのろとシャワーを浴び、砂を噛むように簡単な食事を済ませてから、彼女のことを考えるまいとテレビをつけてみたけれど、全然頭に入ってこない。 携帯を取り出して二人の画像を開いたけれど、眺めるばかりで鳴らないままの携帯が虚しくなってきた。 黒木からは一昨日に電話をもらったばかりだ。 そんなに頻繁にかけられないだろうと自分に言い聞かせる。 「……早く寝ちゃおう」 電気を消して横になっても疲れているのに眠気は訪れてくれなくて、シンと静まり返った部屋でまた寧史や西野円香に言われたことを考えてしまった。
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