奪う女と奪われた女

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「ねぇねぇ、いろんな人に指さされてるよ、里英」 美和が社員食堂でくすくす笑いながら言った。 「招待状のせいじゃない?」 たしかに四方八方から視線を感じる。黒木は注目度が高いから、噂の回りが早いのだろう。 「経理部のみんなが広めたのかな」 「いや?エネ本の女子もこっち見てるよ」 「ほんと?」 「うん。あの人も、ほら、あっちの男の人もエネ本だよ。あっ、あの人、本社からの出向組だよ?黒木主任のお友達じゃない?」 「よく知ってるね、美和」 緊張して身動きが取れなくなっている私に代わって、物知りな美和がキョロキョロして教えてくれる。 「さすが黒木主任は超有名人だから里英まで注目されちゃうね」 もしかして黒木はちゃんと招待状を出してくれていたのだろうか?
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