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「美和、面白がってるでしょ」
「だって経理部女子ってポジション低いから、なんかスカッとするじゃん。獲物は頂いた、ざまぁーって感じ」
「やめてって。声が大きいよ」
美和は列から飛び出してスキップでもしそうな様子で楽しそうにケラケラ笑った。
「これからはトイレも一人で行かない方がいいんじゃない?」
「なんで?」
「気を付けないと、黒木主任を狙ってた女子にボコられちゃうよ」
「まさか」
笑って首を振ったあと、自分の平凡なファッションを見下ろした。
「でも、あんな子が?って思われてるだろうね。黒木主任に恥かかさないようにしないと」
雑誌の読者モデルのように垢抜けてリッチな西野円香の着こなしを思い浮かべてから、頭を振って追い払う。
「里英の何が悪いのさ?堂々としてなよ」
彼も招待状を出してくれたらしいと結論を下して心が少し軽くなった私は、美和の言葉が当たらずとも遠からずの事態が待ち受けているとは予想していなかった。
寧史を奪い、黒木に最も近かった彼女──何度も私をコンプレックス地獄に突き落とすあの彼女が、私に直接コンタクトを取ってきたのだ。
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