奪う女と奪われた女

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「……西野さん」 初めまして……ではないし、何と挨拶すればいいのだろう。 数日前にお互いドレス姿で会ったばかりだ。 「こんばんは」 「……こんばんは」 私が必死で絞り出したぎこちない挨拶と笑顔に返ってきたのは、まったく愛想のない冷ややかな声だった。 微妙な距離を置いたまま睨み合う……というより彼女が一方的に私を睨みつける息詰まる沈黙のあと、ようやく彼女が口を開いた。 「少しお話したいんですが、お時間を頂いてよろしいですか?」 言葉遣いは丁寧でも、彼女の目つきも声も高圧的で、有無を言わせぬ響きがある。 来るべきものが来た、という感じだろうか。 予想外の不意打ちではあったけれど、いつかこんなこともあるかもしれないと首を洗って待つような、そんな覚悟がどこかにあったのかもしれない。 頭は意外と冷静にこの状況を受け止めていた。 「……はい」 「じゃあ、あそこで」 彼女は少し先に見えているカフェを指差すと、あとは無言で歩き始めた。
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